サンガーズ奮闘記

去った「第１９回山浩JRベースボールトーナメント」の準々決勝戦でのことである・・。

試合前の練習をひと通り終えて、ベンチ裏に戻る途中、「ご苦労様。」と声をかけられた。
うちのチビッ子軍団メンバーのおじいちゃんとおばあちゃんである。
夫婦揃って一塁側のファールグラウンドあたりに、椅子を並べて仲良く座っている。

「あら、向こう（ベンチ）に行って一緒に応援したらいいですよ～♪」とお誘いした。
すると、「どうも若いご父兄に交じっての応援はね～。」と照れながらおじいが答える・・。





去った屋部区八月踊りの道ズネーの際、旗頭を終えた自分にその子のおばあちゃんが、
「いつも孫の面倒を見ていただき、ありがとうございます。」と頭を下げられた。
「いえいえ・・。」 こちらも恐縮しながら頭を下げた。
「ほんとに、野球を始めて学校も生活態度も良くなっています～♪」との言葉に、
「いえいえいえ・・。」 ほんとに恐縮しきり・・。
「ほんとね、言うこと聞かないと『監督に言うよ～。』と言うと効果てきめんなんですよ～。」
「いえいえいえいえいえ・・。」 お褒めの言葉に頭が上がらなくなってしまった。

「今度是非、応援に来てやってください～♪」とやっと顔を上げて、ご案内申し上げた。


準々決勝の数久田ヤンキース戦、試合開始直前にその子に声をかけた。
「今日は、おじいとおばあが応援に来ているぞ～♪頑張らないとな・・。」
「はい。分かっています。頑張ります・・。」 表情が一層と引き締まったようにみえた。

・・そして試合開始。その子が第一打席を迎える。サインを送るため視線をやると、
その子の打席の先には、応援に来ているおじいとおばあの姿が一緒に映り込む。
見ると、その子をジッと見つめ、おばあが胸の前で両手を合わせ、握りしめている。

「おじいとおばあが来ているんだ。絶対に打って喜ばせろ・・。」と自分も念じた。
・がしかし、そんなおばあの願いも届かず、空振り三振となってしまった。


試合も進み、大量リードで迎えた次の回、早くも第二打席目が回ってきた。
しかも、無死満塁と絶好のチャンス・・。「今後こそは～！」と強振一閃。
放った打球がセカンド頭上を越え、右中間を深々と破っていく。長打コースだ！
「回れ回れ～。」 子供たちがベンチで大声を張り上げる。
その子も必死にベースを駆け抜ける。おばあが椅子から立ち上がり、拍手で声援を送る。

走者一掃の満塁ランニングホームラン～♪　子供たちがベンチで嬉しそうに迎える。
「ナイスバッティング～♪」と声をかけ、おじいとおばあの方に視線を向けると、
おばあが椅子から立ち上がり、小躍りで拍手をしながら喜んでいる。
おじいは椅子から立ち上がらずとも、ここまで聞こえるかのような大きな拍手を送っている。

そんな嬉しそうないおじいとおばあに向かって、自分の方から右手を上げてガッツポーズ。
すると、そのガッツポーズが届いたのか二人とも椅子から立ち上がり、深々と頭を下げている。
「あ～良かった・・。」 二人のそんな姿に思わず涙がこぼれそうになってきた・・。


・・そう言えば、うちの親父もそうであった。凛太朗や竜誠、あかりにとってはおじいである。
生前は、凛太朗や竜誠の試合に応援に来ては、その活躍を晩酌の肴（さかな）にしていた。

ある日、庭の芝生で素振りの練習をしていると、踏ん張る足元の芝生に穴があく。
「もう～芝生に穴が開いてどうするの～？」 おばあがしかめっ面しても、
おじい曰く、「なんで～、また芝を植え替えればいいし～・・。」ってどこ吹く風の涼しい顔。

また雨の日、大広間で同じく素振りの練習をすると、「畳が傷つく～！」のおばあの声にも
またまたおじい。「なんで～・・、畳も買い替えれば・・。」と、子供たちの素振りを応援してくれた。

常に寡黙であり、大声を張り上げて声援することはなかったが、
ことある毎に球場へ足を運び、誰よりも子供たち（孫）を応援してくれた。
そして、自分以上に子供たち（孫）の成長を楽しみにしていた・・。
・・・ま、今では叶わぬ夢となってしまっているのだが。

その子のおじいとおばあが、かつての自分の親父の姿と重なったかもしれない・・。

「・・いつも指導してくれて、ありがとうございます～♪」
「いえいえいえ・・。」 こちらこそ子供たちを応援してくれてありがとうございます。


我々は、そんなおじいとおばあの願いに最大限応えなくてはならないのだ・・。