先だっての日曜日(5日)・・。稲田少年野球さんとの練習試合でのこと。
第1試合目の稲田戦。序盤は相手投手の速球に押されつつも、中盤あたりから
徐々にタイミングが合ってくる。ヒットも出始めてきた中、相手内野陣のミスに乗じ、
得点を重ね、6対1と勝利した後、3塁側の稲田ベンチの横を通り過ぎようとした時、
応援のため、そこの陣取っていた父兄の一人から突然に声をかけられた。
「ん?」声のする方に顔を向けると、帽子を目深に被った一人のおじさんである。
よく見ると、自分と同じ中学校での同級生ではないか~♪
「あら、何でまたここにいる?」聞けば、稲田少年野球に「孫」がいるとのこと。
それで応援に来たらしい・・。その孫は3年生で3塁コーチャーで声を張り上げる。
「へぇ~、孫がいるのか。」その同級生の視線の先には「お目当て」の孫の姿が映る。
「何でまたここにいる?」って思いはお互い様らしく、「で、何でまた?」同じ台詞。
「あ、いや・・。」自分の方は「孫」ではなく、サンガーズの監督であるって告げると、
「あ~まだ野球をやっているのか。」驚きの声と同時に、不思議そうな表情を見せる。
実はこの同級生だが、自分の東江中野球部時代のメンバーであった・・。
思い出と言えば左のエースであったこと、ものすごくコントロールが悪かったってこと。
そんなノーコン(笑)のせいで、何度もチームが窮地に立たされることしばしば。
その度にマウンドへ足を運び、苦言(?)を呈したことを今でも鮮明に覚えている。
あれは中学校最後の県大会、初戦での神森中戦・・。初回、相手の攻撃でのこと。
こいつが緊張する柄でもないが、先頭打者から3番打者まで一球もストライクが入らず、
無死満塁を演出・・。いきなりの大ピンチを迎え、キャプテンで三塁手であった自分が
内野陣に声をかけ、渋々マウンドに駆け寄る・・。
すると、そいつが「何で集まるか~。」って、グローブを差し出しながら拒否の態度。
「お前、いい加減にせーよ。」自分が開口一番、思わず文句が口をつく。
あの当時、我ら東江中野球部と言えば野武士軍団・・。他校からも恐れられていた。
当然ながら優しい言葉をかける奴なんで、チームを見回しても誰一人いない。
そうだ・・。晴れの県大会であってもチームカラーはけっして変わらないでいたのだ。
自分のその言葉をきっかけに、マウンドのそいつに向かって他のメンバーも文句の
雨あらし状態・・。だが、そんなキツイ言葉がけは想定していたようで、集まった際、
そいつが嫌な表情を見せた。もちろん、激励しに来たわけではないことは承知の上。
マウンドにてメンバーの罵詈雑言を聞かせられている中、変な言葉を投げかける。
「俺はな~、『中西清起』から凄いピッチャーだって言われたんだぞ~!って。
続いて、「いらん心配しないでサッサと自分の守備位置に戻れ~!」だって・・。
「はあ~?何言ってるば~?」自分ら全員が呆気に取られてしまった。
その「中西清起」と言えば、かの阪神タイガースで活躍したピッチャーで抑えの切り札。
1985年に阪神タイガースが何十年か振りにリーグ優勝を成し遂げた立役者・・。
引退後は阪神タイガースのピッチングコーチとして就任し、後進の指導にあたる。
そんな中西清起投手が高知商業から社会人野球のリッカーに進んだ頃の話。
あの当時、リッカー野球部が名護球場でスプリングキャンプを行っていたこともあって、
キャンプの合間に地元の小学生や中学生を対象に野球教室を開催していたのだが、
その時、中西清起投手は「投手部門」の担当としてピッチャーを指導していた。
そんな中、かのノーコンピッチャーであった同級生は、中西清起投手から、
「将来、凄いピッチャーになれる。」って言われたのが、よほど嬉しかったようなのだ。
(ま、他に誰も聞いていないので、それが事実がどうかも定かではないのだが。)
「だから大丈夫・・。早く戻れ。」端から見れば、まるで喧嘩でもしているかのよう。
「ほんとバカたれが~。もう~勝手にせーよ。」文句垂れながらポジションに散らばる。
すると、我らの激励(?)が功を奏したのか、続く4番から3者連続三振に打ち取り、
この初回の大ピンチの場面を無得点で切り抜けた・・。
まるで「中西清起」に言われた通り、凄いピッチャーの片鱗を見せつけたのである。
ベンチに戻りながら「最初っからそう投げろ。」ドヤ顔になっているこいつに一言。
すると、「だろ・・。自分の言ったとおりだろ~♪」ドヤ顔がさらに磨きがかかっている。
「・・・。」返す言葉がなく、沈黙を余儀なくされてしまった次第で・・。
いろんなことが起きたが、結局、試合は残念ながら2対1で敗れてしまった訳で・・。
《自分の時代で達成できなくとも、次世代が引き継いでくれる・・。伝統のごとく。》
「今も野球はやっているのか~?」そんなことを聞いてみようと思ったが、
あの「孫」を追いかける視線に、「野球は~?」って聞くのは野暮なことに気づいた。
こいつの表情を見れば、野球をやっていなくとも楽しそうな感じが滲み出ていたのだ。
「それじゃあ、また会う機会は多くなるな~。」そう言うと、無言で微笑みうなづく。
「では、また今度・・。」軽く会釈する。近い将来、再会できることが楽しみとなった。
・・笑った時の表情が昔の顔と重なり、一瞬、思い出がオーバーラップした~♪
「あ・・。」 凄いピッチャーになったかどうか、聞くのを忘れた・・。