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2019年11月12日

「オレンジリボン」を胸に・・。


今日は穏やかな一日・・。仕事に関する「ちょっと真面目な話」でも。
少し長く、気が重くなるような内容ですが、最後までお付き合いを・・。


さて、毎年11月は「児童虐待防止推進月間」である・・。

その月間の象徴である「オレンジリボン」には、「児童虐待防止」という
メッセージが込められている。一人でも多くの方々に「児童虐待防止」に
関心を持ち、子供たちの笑顔を守るために一人ひとりに何ができるかを
呼び掛けていく活動が、「オレンジリボンキャンペーン」であると言うこと・・・。
この11月の「児童虐待防止推進月間」を機に、国や地方自治体、NPO法人
だけではなく、民間企業やスポーツ団体等の関係機関の協力を得ながら、
様々な取り組みを通じて児童虐待防止への普及活動のための
キャンペーンイベントを展開していこう~ってことが趣旨である・・。

児童虐待や障害者虐待、または高齢者虐待など・・。
虐待の種別は違えど、非人間的で卑劣な行為であることには間違いない。

仕事柄、この手のような深刻な相談がたびたび寄せられるのも事実なのだ。


・・そしていつも思い出す悲しい出来事・・。
たしか年の瀬も押し迫った今の時期だったように思うが、こんなことがあった。

自分ら家族がまだ団地住まいであった時のこと・・。
子供たちにビデオを見せるため、レンタルビデオ店に借りに行った。
午後6時30分を少し回った時間である・・。車を走らせていると、
ビデオ屋さん近くのコンビニの駐車場に、小学校6年生ぐらいの女の子と
保育園児ぐらいだろうか、弟らしき男の子が立っているのが目に入ってきた。
・・仕事のクセである。このような光景には敏感になっているのだ。

ま、しかし6時30分ぐらいだし、このくらいの時間に子供が立っているのは
何ら不思議でもない・・と思ったのだが、一つだけ不自然に感じるものがあった。
その保育園児ぐらいの男の子が保育園で使用するような「お昼寝カバン」を
肩から下げて持ち歩いていたことである・・。
「ん」?」 小さな体に大きな「お昼寝カバン」がやけに目立っている・・。
まあ~その時はそんな深刻さも感じられなかったんで、
いそいそとレンタルビデオ店に急いだ。

子供たちが1本目のビデオを観終え、2本目も観たい~ってことになって、
「もう~。」 そんな文句を言いながらビデオ店屋さんに急いだ時間が、
夜の9時を少し回っていた・・。すると、先ほどのコンビニ駐車場に、
あの女の子が立ち、その横で弟らしきの男の子が座り込んでいるではないか。
視線をやると、弟らしく男の子は泣いているようにも見える・・。

これにはさすがにおかしいと思い、すぐさま車を止めて話を聞きに向かった。

「どうしたの~?」 怪しまれずにと声をかけたが、完全に警戒されてしまった。
「いやいや、おじさんは決して怪しい者ではないから・・。」 必死に話をすると、
女の子から「家出してきた・・。」 思いも知らない言葉が発せられる。
「え、家出?」 つい声をあげてしまった。・・家出となれば心情穏やかではない。

「ちょこっと荷物を見せてもらっていい?」 了解をもらい、
女の子が背負っていた赤のランドセルを見ると、中には教科書がぎっしり・・。
家出してきたというのに着替えらしきな物は入っていない。
「ん?」 そっか、その男の子が持っている「お昼寝カバン」に入っているのか。
お昼寝カバンを開けると、なんとおもちゃがびっしりと入っているではないか。
聞けば、家出するにあたり一番大切な物を持ってきたという・・。

う~ん・・、これは何かおかしいぞ・・。
・・ひとまず、この子らを説得して自宅へと向かった。

自宅は比較的近くであった。ドアを叩いたのか、チャイムを押したのかは
定かではないが、家の中から若い男の人が顔を出した。

「・・。」 明らかにその子らの親ではないな~って直感した。
「親父さん?」 聞くとやはりそうじゃない、留守番を頼まれていると言う。
「お母さんは?」 立て続けに聞くと、仕事に行っていて不在であるとのこと。
・・しょうがない・・。母親と話がしたかったんだが・・。

ひとまず若い男の人にこれまでの経過を話し、引き取ってもらうようお願いする。
そして帰る間際、母親が帰ってきて何か困り事があるようだったら連絡を・・と、
その若い男の人に名刺を渡し、今日のところは引きあげてきた。

帰る車の中で、・・もしかしたら、この子らが家出してきたのは、
この若い男の人に何か関係があるかもしれないと思ったのだが、
その時点では何も確かめようがなかった次第である。

ひとまず安心しての帰宅中、「・・あ。」 追加のビデオを借りるのを忘れた・・。


すると2、3日後だろうか、その子らの母親から連絡が入った。
会ってみるとこちらも若い母親である。・・あの時の経緯を話したあと、
事情を聞いてみると、つい最近離婚したばかりで生活が大変苦しく、
子供を養育できる状態ではない・・。どうにが助けてほしいとのことであった。

「・・・」 う~ん母親の話を聞きながら、なにか腑に落ちない・・。
子供たちを自宅まで送っていた時に会った若い男の人は誰だ・・?
あら、あの留守番をお願いした若い男の人は~?って聞くと、
「・・。」 友達です・・との答え。う~ん・・、なんか引っかかる。

生活が苦しいというのならば生活保護の話も・・と何度か相談もしたが、
今の状況が改善するまで、しばらくは施設に子供たちを預けたいと
そんな希望もあって、入所の手続きという支援の方向を決定したのだが。


それから数カ月経ったある日のこと・・。
その子らを預けた施設の職員から一報が入る。
「母親の行方が分からなくなった。」とのこと。

施設では、定期的に子供を預けた親御さんらと面会・相談をしながら、
生活が落ち着いた頃を見極めて、親御さんの元へ戻す「退所後支援」と
いうのがあるのだが、母親との連絡が取れなくなってしまったというのだ。

「まさかだろ・・。」 不謹慎だが、怒りがこみ上げてきた・・。

その一報を受け、自宅はもちろんのこと昼の職場、夜の店など
方々探し回ったが見つからない・・。手詰まりとなってしまった。
「子供らに話して手がかりを探るか・・?」 しかし伝えることは忍びない。

どうも手がかりがない中、仕方なくそのことを女の子に話した・・。
「あの~お母さんと連絡が取れなくなったけど他の行き先知らない?」
するとその女の子は淡々と、「あ、もういいです・・。」 そう答えた・・。

母親がいなくなることを想定していたようにも思えた。


結局、その子らの母親は行方知れず・・。その子らは家に帰ることもできず、
この施設での生活を継続せざるを得なくなってしまった。
なんか、そんなその子らの気持ちを察すると、いたたまれなくなったことと、
あの時、母親の願いを受け施設に入所させたことの後悔の念に苛まれた・・。

それから数年経って、彼女が高校の卒業式を迎えた・・。
高校の卒業を機に施設を退所することになった。しかも下の弟も連れて・・だ。
施設の職員は心配したものの、「大丈夫です。弟の面倒は自分がみます。」

「弟には母親が逃げてしまったように同じ寂しい思いはさせたくない。」
この時、そんな強い決意を言い残して退所していったと聞かされた・・。


この時期になると、今でも忘れることができず、いつも自問自答を繰り返す。
母親と再会することはできたのだろうか?家族の絆は取り戻したのであろうか?
また今でも姉弟二人で元気に仲良く、無事に暮らしているのであろうか・・?

そして、あの時の自分たちの関わり(支援)は正しかったのか・・?


「オレンジリボン」を胸に・・。


母親から養育放棄(・・少なくとも自分はそう思って怒っている。)を受け、
悲しい時代を過ごしてきたその子らの前途が希望に満ちたものであってほしい。
今はそのことを切に願うことしかできない・・。

この仕事に携わり20数年・・。
その出来事を教訓にいつまでも忘れないよう心に刻み続けていこうと思う。

・・ほんと、話が長く、重くて申し訳ないです。

オレンジリボンを見る度に・・。


・・再びこのようなことを起こさないよう、我々は全力を尽くす・・。





Posted by UMUサン at 21:30│Comments(4)
この記事へのコメント
サンガーズ奮闘記さま、お世話になっております。
「オレンジリボン」を胸に・・。を読んで、僕が尊敬する一人、自称「野球馬鹿」様から、「サンガーズ奮闘記」ブログを薦めて頂いたことを懐かしく思い出しています。まさに、この社会的背景の弱者の内容を記載されたコトの記事を薦めて頂きました。それから、サンガーズ奮闘記を読む度に惹かれていきました。毎回ブログを読む中で、様々な学び、気づき、教え、たくさんの野球情報を頂いております。本当に感謝しております。ありがとうございます。
また、今回勝手ながら、職場の研修で「オレンジリボン」の記事の内容を活用させて頂きましたコトを深くお詫び申し上げます。まだまだ、オレンジリボンの記事であげられている、心が痛む悲惨な現実が今もなお起こり続けていると思います。オレンジリボンの啓発運動の展開が広がり、生まれた一人一人が「幸せ」と感じられる社会を育んでいけたらと願います。
これからもサンガーズ奮闘記さまのブログ発信を楽しみにしています。
いつも、たくさんの感動を与えて頂き、ありがとうございます。
Posted by やんばるチョンダラー at 2019年11月12日 23:35
** やんばるチョンダラーさん おばんです **

激励のコメントをいただき、感謝申し上げます。
自分らの仕事は「生まれた地域でいつまでも元気に。」を
目標として活動しています。
しかしながら、いろいろと目まぐるしく変わる昨今、
だんだんと人間関係が希薄し、それが元でトラブルに見舞われます。
そんなトラブルを解決するためには良好な人間関係を正常化にすることです。
お互いを思う気持ちや寄り添う気持ちは我々の根本になければならないし、
それをなくしては生きていけないものだと思います。
それは仕事に限らず、日々の生活や家族内、野球にも相通じるものと思います。
日々日常を発信していく中で、何かしらを感じていただければ
幸いに存じます。
これからも末永くご愛顧いただき、時には叱咤激励の言葉を下されば
幸いに存じます。
今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by UMUサンUMUサン at 2019年11月13日 23:20
サンガース奮闘記さま
元気を与えてくれるコメントありがとうございます。
「生まれた地域でいつまでも元気に。」をとのコトバ、共有・共感、感動を頂きました。ありがとうございます。
これからも、サンガース奮闘記ブログを楽しみにしています。
Posted by やんばるチョンダラー at 2019年11月14日 06:38
** やんばるチョンダラーさん こんばんわ。**

嬉しいコメント、ありがとうございます。
これからも仕事に野球に、そして地域生活を全力で
楽しんでいきたいと思います。

今後とも応援をよろしくお願いいたします。
Posted by UMUサン at 2019年11月14日 18:55
 
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